文章理解
行政書士「文章理解」の問題
本を読むことの意味は、情報を得ることだと考えられがちである。確かに、実用書や解説書を開くのは、知らないことを知るためだろう。しかし、それだけなら、より速く要点を教えてくれる手段が他にいくらでもある時代に、読書がわざわざ選ばれる理由は乏しい。要約を読めば数分で済む内容を、なぜ何時間もかけて読むのか。
一つの答えは、読書が情報の受け取りではなく、経験の一種だという点にある。小説を読むとき、私たちは登場人物とともに悩み、選び、後悔する。自分の人生では一度しか生きられないのに、書物の中では何十もの人生を内側から生きることができる。その経験は、現実で他者と向き合うときの想像力の底荷になる。評論を読むときも同じである。結論だけを受け取るのではなく、著者が迷い、論を積み上げ、反論を退けていく道筋を、自分の頭でなぞっていく。結論という果実だけでなく、結論に至る根の部分まで受け取るのである。
この「なぞる」という過程こそが重要である。他人の思考の道筋をなぞるうちに、私たちは自分ひとりでは決してたどり着けなかった考え方の型を、身につけていく。速く読んで結論だけ取り出すことは、山頂の写真だけを見て登山を済ませたつもりになることに似ている。〔 ア 〕、読書の価値は結論という到達点にではなく、そこへ至る道行きにあるからである。時間がかかることは読書の欠点ではない。時間がかかることこそが、読書という経験の本体なのである。遠回りに見える時間こそが、思考の足腰を作るのだ。
本文中の空欄〔 ア 〕に入る語句として妥当なものはどれか。
1なぜなら
2しかし
3ところで
4たとえば
5それにもかかわらず
正解
1.なぜなら
山頂の写真の比喩の直後で、その比喩が成り立つ理由(価値は道行きにある)を述べるので「なぜなら」が入る。
?選択肢ごとの解説
1 ○山頂の写真の比喩の直後で、その比喩が成り立つ理由(価値は道行きにある)を述べるので「なぜなら」が入る。
2 ×空欄の後は直前の比喩と対立せず、その根拠を述べている。
3 ×話題は転換しておらず、同じ論点の理由説明が続く。
4 ×後続は例示ではなく理由の提示。
5 ×前後に譲歩と反転の関係はない。
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作成・校閲:ukamiru編集部 · 行政書士 過去問 · gyosei-kiso8-0031
