文章理解
行政書士「文章理解」の問題
紙幣は、それ自体としてはただの紙切れである。印刷は精巧だが、食べることも着ることもできない。にもかかわらず、人々はこの紙切れと引き換えに、米を渡し、服を渡し、一日の労働を差し出す。考えてみれば奇妙な光景である。なぜ価値のない紙が、価値あるものと交換されるのか。
かつての貨幣は、金や銀といったそれ自体に価値のある素材で作られていた。紙幣もはじめは、金との交換を約束する預かり証にすぎなかった。しかし現代の紙幣は、金との交換を保証されていない。紙幣を発行者のもとへ持ち込んでも、別の紙幣と換えてもらえるだけである。それでも紙幣が通用するのは、皆がそれを受け取るからである。私が紙幣を受け取るのは、明日、他の誰かがそれを受け取ってくれると確信しているからであり、その誰かもまた、次の誰かを当てにしている。貨幣を支えているのは素材の価値ではなく、この連鎖への〔 ア 〕なのである。
だからこそ、貨幣は強くもあり脆くもある。皆が信じている限り、ただの紙が万物と交換される。だが、受け取ってもらえないかもしれないという疑いが広がれば、その瞬間から紙幣は紙切れへと転落し始める。物価が急激に上がる国で、人々が紙幣を投げ捨てるように物へ換えようとするのは、この転落の姿である。貨幣の価値とは、金庫の中にあるものではなく、人々の間にあるもの、すなわち社会の約束事そのものなのだ。だから貨幣を守るとは、紙を守ることではなく、約束への信頼を守ることにほかならない。
本文中の空欄〔 ア 〕に入る語句として妥当なものはどれか。
1欲望
2強制
3習慣
4信頼
5打算
正解
4.信頼
「確信しているから」「当てにしている」という直前の説明を一語でまとめると信頼になる。
?選択肢ごとの解説
1 ×欲しがることではなく、受け取られ続けることへの確信が論点。
2 ×本文は権力による強制ではなく、人々の自発的な確信の連鎖を述べている。
3 ×惰性ではなく「確信」という語で説明されており、疑いが広がると崩れる点も習慣では説明しにくい。
4 ○「確信しているから」「当てにしている」という直前の説明を一語でまとめると信頼になる。
5 ×連鎖を支えるのは各人の損得の打算ではなく、誰もが受け取るという信頼である。
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作成・校閲:ukamiru編集部 · 行政書士 過去問 · gyosei-kiso8-0034
