文章理解
行政書士「文章理解」の問題
老いは、衰えの過程として語られるのが普通である。体力は落ち、記憶は薄れ、新しい機器の操作には手間取る。若さを基準に置く限り、老いは失っていくことの連続であり、抗い、遅らせるべきものとなる。実際、書店には老化に抗う方法を説く本が並び、若々しさは褒め言葉として通用している。
しかし、老いを〔 ア 〕の過程としてだけ捉える見方は、一面的にすぎる。年齢を重ねた人は、若い人が持ちえないものを持っている。長い時間の中で人と組織の盛衰を見てきた経験は、目先の変動に動じない判断の土台になる。多くの失敗を重ねてきたことは、他人の失敗への寛容につながる。何より、自分の残り時間が有限だという自覚は、何が本当に大切かを選び分ける力を研ぎ澄ます。若さが可能性の広さで豊かだとすれば、老いは重要なものを見極める深さで豊かなのである。衰えの物差しだけで老いを測ることは、この深さをはじめから視野の外に置くことになる。
〔 イ 〕、こうした老いの豊かさは、自動的に手に入るわけではない。経験が頑固さに、記憶が繰り言に変わってしまう例も少なくない。豊かに老いるには、経験を絶対視せず、若い世代から学び直す柔らかさが要る。老いの価値は年月が運んでくるものではなく、年月との付き合い方が育てるものなのだ。老いを衰えとしてだけ恐れる社会は、人生の後半戦から意味を奪う。老いの内側にある成熟の可能性に目を向けることは、誰もが当事者になる課題である。長寿の時代とは、老いの意味を問い直す時代のことでもある。
本文中の空欄〔 ア 〕・〔 イ 〕に入る語句の組合せとして妥当なものはどれか。
1ア:成熟 イ:ただし
2ア:喪失 イ:ただし
3ア:喪失 イ:それゆえ
4ア:安定 イ:しかし
5ア:成熟 イ:なぜなら
正解
2.ア:喪失 イ:ただし
アは「失っていくことの連続」の言い換えで喪失、イは豊かさの主張に条件を付ける「ただし」が入る。
?選択肢ごとの解説
1 ×「失っていくことの連続」という前段の見方を指す語であり、成熟では逆になる。
2 ○アは「失っていくことの連続」の言い換えで喪失、イは豊かさの主張に条件を付ける「ただし」が入る。
3 ×イの後は帰結ではなく、豊かさに付す条件の指摘。
4 ×アは衰えの文脈を受ける語でなければならず、安定は合わない。
5 ×アが逆方向である上、イも理由説明ではない。
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作成・校閲:ukamiru編集部 · 行政書士 過去問 · gyosei-kiso8-0042
