文章理解
行政書士「文章理解」の問題
地図は現実の縮小版だと思われている。しかし、正確に考えるなら、地図は現実を縮小したものではなく、現実から膨大な情報を捨てたものである。路線図は駅の並び順と乗り換えの関係だけを残し、実際の距離も方角も地形も捨てている。それでいて、いや、それだからこそ、路線図は乗客の役に立つ。もし路線図が地形も距離も忠実に再現したら、かえって読み取りにくくなるだろう。地図の有用性は、現実をどれだけ写し取ったかではなく、目的に応じて何を〔 ア 〕したかによって決まるのである。
この原理は、地図に限らず、あらゆる知的な道具に当てはまる。模型も、図表も、理論も、現実の一部を意図的に無視することで見通しを与える。経済のモデルは人間の感情の多くを無視するし、解剖図は個人差を無視する。無視は欠陥ではなく、機能なのである。何もかもを描き込んだ地図は、現実と同じ大きさの、役に立たない複製にすぎない。
〔 イ 〕、忘れてはならないのは、捨てられたものは消えたのではなく、地図の外に残り続けているということである。路線図に慣れた乗客は、駅と駅の間に坂道や川があることを忘れる。モデルに慣れた分析者は、無視したはずの感情が現実を動かすことを忘れる。道具の単純化を現実そのものと取り違えたとき、道具は人を賢くする代わりに盲目にする。地図を使いこなすとは、地図に描かれていないものの存在を、絶えず思い出し続けることなのだ。道具の限界を知る者だけが、道具の力を最後まで引き出せるのである。
本文中の空欄〔 ア 〕・〔 イ 〕に入る語句の組合せとして妥当なものはどれか。
1ア:再現 イ:ただし
2ア:捨象 イ:ただし
3ア:捨象 イ:それゆえ
4ア:拡大 イ:しかし
5ア:再現 イ:つまり
正解
2.ア:捨象 イ:ただし
アは「情報を捨てる」ことの言い換えで捨象、イは効用を認めた上で注意を促す「ただし」が入る。
?選択肢ごとの解説
1 ×有用性は写し取りの精度ではないと直前で否定されており、再現は逆方向。
2 ○アは「情報を捨てる」ことの言い換えで捨象、イは効用を認めた上で注意を促す「ただし」が入る。
3 ×イの後は前段の帰結ではなく、単純化の効用に対する注意の付加。
4 ×路線図の例は情報を捨てる話であり拡大ではなく、イも全面対立ではなく留保。
5 ×アが本文の否定した見方に属し、イも要約の関係にない。
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作成・校閲:ukamiru編集部 · 行政書士 過去問 · gyosei-kiso8-0037
