文章理解
行政書士「文章理解」の問題
時計の上では、一時間は誰にとっても一時間である。しかし、体感される時間の長さは、驚くほど伸び縮みする。楽しい休日は瞬く間に過ぎ、退屈な会議は果てしなく続く。子どもの頃の一年はあれほど長かったのに、大人になると一年は年々短くなっていく。物理的な時間と心理的な時間とは、明らかに別の物差しで測られている。同じ一日が、ある人には濃密な一日となり、別の人には空白のように過ぎていくのである。
この伸び縮みには、いくつかの説明が試みられてきた。有力なのは、記憶に刻まれる出来事の密度が体感の長さを決める、という考え方である。初めての経験に満ちた時間は、後から振り返ると長く感じられる。子ども時代が長いのは、毎日が初めてのことだらけだからである。逆に、同じことの繰り返しは記憶に残らず、振り返れば一瞬に圧縮されてしまう。大人の一年が短いのは、時間そのものが速くなったからではなく、新しさが減ったからだと説明できる。
〔 ア 〕、この説明を裏返せば、時間を豊かにする手立ても見えてくる。年月の流れを緩やかにしたければ、生活に初めてを増やせばよい。通ったことのない道を歩く、読んだことのない分野の本を開く、行ったことのない土地を訪ねる。時間の速さは変えられないが、時間の密度は自分で変えられる。老いとともに時が速くなるという嘆きは、半分は宿命だが、残りの半分は生き方への問いなのである。時計を速く見せているのは、時計ではなく、代わり映えのしない日々のほうなのだ。
本文中の空欄〔 ア 〕に入る語句として妥当なものはどれか。
1なぜなら
2ゆえに
3ところで
4要するに
5たとえば
正解
3.ところで
前段までの「説明」から後段の「応用」へ論点を切り替えるので、緩やかな転換の「ところで」が最も適切。
?選択肢ごとの解説
1 ×空欄の後は前段の理由説明ではなく、新しい展開。
2 ×前段と対立する内容は続いておらず、逆接は不適。
3 ○前段までの「説明」から後段の「応用」へ論点を切り替えるので、緩やかな転換の「ところで」が最も適切。
4 ×後続は前段の要約ではなく、裏返しによる応用の提案。
5 ×空欄直後の文自体は例示ではなく、視点の切り替えの宣言。
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作成・校閲:ukamiru編集部 · 行政書士 過去問 · gyosei-kiso8-0028
