文章理解
行政書士「文章理解」の問題
自転車の乗り方を言葉で完全に説明できる人はいない。ハンドルの角度、体重の移動、ペダルを踏む力加減。乗れる人はそれらを瞬時に調整しているが、何をどう調整しているのかと問われると、口ごもってしまう。泳ぎ方も、楽器の演奏も、包丁の使い方も同じである。私たちの知の少なからぬ部分は、言葉にできる知識としてではなく、身体の動きそのものとして蓄えられている。
近代の学問は、知識といえば言葉や記号で表せるものを考えてきた。教科書に書ける知識、試験で問える知識である。その結果、身体に宿る知は、知識の名に値しない単なる慣れとして、低く見られがちであった。頭脳労働と肉体労働という区分も、この序列を反映している。
しかし、実際の熟練を観察すると、この序列は疑わしくなる。経験を積んだ看護師は、数値に表れる前に患者の異変を察知する。腕のよい大工は、木材を見て触れただけで、その癖を見抜く。彼らの判断は勘と呼ばれるが、それは長年の経験が身体に沈殿した、精密な知の働きである。〔 ア 〕できないことは、知が存在しないことを意味しない。
〔 イ 〕、身体の知には言葉の知にない強みがある。状況の微細な違いに応じて、考えるより速く反応できることである。マニュアル化された知識が想定外の事態に弱いのに対し、身体の知は崩れた状況でも働き続ける。知を言葉の側だけで考えることは、人間の知の半身を見落とすことなのである。知の全体像は、頭と身体の両方を数え入れてはじめて描けるのだ。
本文中の空欄〔 ア 〕・〔 イ 〕に入る語句の組合せとして妥当なものはどれか。
1ア:数値化 イ:しかも
2ア:言語化 イ:ただし
3ア:制度化 イ:ゆえに
4ア:言語化 イ:しかも
5ア:数値化 イ:一方
正解
4.ア:言語化 イ:しかも
アは「言葉で説明できない」という冒頭からの主題を受けて言語化、イは身体知の擁護に強みを追加する「しかも」が入る。
?選択肢ごとの解説
1 ×本文の対比は言葉にできる知とできない知であり、数値はその一例にすぎない。
2 ×イの後は身体知の強みの追加であり、留保や条件ではない。
3 ×制度の話は本文になく、イも因果の接続ではない。
4 ○アは「言葉で説明できない」という冒頭からの主題を受けて言語化、イは身体知の擁護に強みを追加する「しかも」が入る。
5 ×アがずれている上、イの前後は対比ではなく同方向の追加。
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作成・校閲:ukamiru編集部 · 行政書士 過去問 · gyosei-kiso8-0029
