文章理解
行政書士「文章理解」の問題
廃墟に心を引かれる人は少なくない。崩れた工場、蔦に覆われた洋館、草に沈む遊園地。写真集が編まれ、見学の旅が組まれるほどの人気である。考えてみれば不思議な現象である。廃墟は失敗と衰退の跡であり、本来なら目を背けたくなるはずのものだからである。廃墟の何が、人を捉えるのだろうか。
一つの鍵は、廃墟が時間を見せてくれる点にある。現役の建物は、修繕と清掃によって時間の痕跡を絶えず消され、いつも現在の顔をしている。廃墟では、手入れという抵抗が止み、風雨と植物という時間の働きが、遮られることなく姿を現す。剥がれた塗装や裂けた床の一つ一つが、経過した歳月の目盛りである。私たちが廃墟で見ているのは、崩れた建物というより、ふだんは隠されている〔 ア 〕そのものなのである。
もう一つの鍵は、廃墟が問いかけてくる点にある。この場所で誰が働き、何を夢見ていたのか。繁栄はなぜ終わったのか。完全な説明は与えられないまま、断片だけが残されている。この余白が、見る者の想像を誘い出す。整備された史跡が答えを展示するのに対し、廃墟は問いを差し出すのである。説明の少なさが、かえって見る者一人ひとりの物語を呼び込むのだ。
だから、廃墟の魅力は単なる懐古趣味ではない。それは、すべての建設がいつか終わることを静かに示す、文明への注釈である。永遠を装う都市の真ん中で生きる私たちにとって、廃墟は、繁栄の有限性を思い出させる数少ない教師なのかもしれない。滅びの風景が美しいのは、そこに時間の真実があるからだろう。
本文中の空欄〔 ア 〕に入る語句として妥当なものはどれか。
1建築の技術
2自然の脅威
3人間の欲望
4時間の働き
5都市の構造
正解
4.時間の働き
直前で「時間の働きが遮られることなく姿を現す」と述べており、廃墟で見えるのはその時間の働きである。
?選択肢ごとの解説
1 ×工法の話は本文にない。
2 ×災害の恐ろしさではなく、ゆっくり進む時間の痕跡が論点。
3 ×夢や繁栄への問いは次の段落の論点であり、この空欄の対応箇所ではない。
4 ○直前で「時間の働きが遮られることなく姿を現す」と述べており、廃墟で見えるのはその時間の働きである。
5 ×都市論としての分析は行われていない。
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作成・校閲:ukamiru編集部 · 行政書士 過去問 · gyosei-kiso8-0059
