文章理解
行政書士「文章理解」の問題
移動も通信も調理も決済も、あらゆる営みが速くなり続けている。速さは現代の最上位の価値であり、遅いことはそれだけで欠点とされる。だが不思議なことに、これほど時間を節約したはずの私たちに、時間の余裕が生まれた気配はない。むしろ誰もが、以前より追われている。節約された時間は、どこへ消えたのか。
答えの一つは、速さが基準を書き換えるという事実にある。翌日に届く配送が普通になれば、三日かかる配送は遅延と感じられる。即座に返信が来ることに慣れれば、数時間の沈黙が不安を生む。〔 ア 〕の向上は、それ自体としては恩恵だが、同時に期待の水準を引き上げ、新しい標準を作ってしまう。標準が上がれば、それを維持するための努力が要る。速くなった分だけ多くの用件が詰め込まれ、結局、余裕は生まれない。私たちは速さを手に入れたのではなく、速さに追いつく義務を手に入れたのである。
〔 イ 〕、あらゆる場面で減速せよと説くのは現実的でない。速さが人を救う場面は確かにあり、緊急の医療や災害の対応で遅さを礼賛する者はいない。必要なのは、速さの全面的な否定ではなく、速さの適用範囲の吟味である。考えること、育てること、癒えること。世の中には、本来の時間を短縮できない営みがある。それらにまで速さの物差しを当てるとき、私たちは効率を上げているのではなく、営みそのものを壊している。速さを使いこなす文明とは、遅くてよい領域を意識的に守る文明のことなのだ。
本文中の空欄〔 ア 〕・〔 イ 〕に入る語句の組合せとして妥当なものはどれか。
1ア:品質 イ:とはいえ
2ア:効率 イ:それゆえ
3ア:効率 イ:とはいえ
4ア:所得 イ:しかし
5ア:品質 イ:さらに
正解
3.ア:効率 イ:とはいえ
アは速さの向上を一般化した効率、イは速さ批判から全面否定を避ける方向へ転じる「とはいえ」が入る。
?選択肢ごとの解説
1 ×配送や返信の例が示すのは速さの水準であり、品質一般ではない。
2 ×イの後は前段の帰結ではなく、減速論への行き過ぎを抑える留保。
3 ○アは速さの向上を一般化した効率、イは速さ批判から全面否定を避ける方向へ転じる「とはいえ」が入る。
4 ×経済的な豊かさの話は本文になく、イも単純な逆接ではなく譲歩からの転換。
5 ×アがずれている上、イも追加の関係にない。
文章理解の他の問題
文字の発明は、人類の知の歴史における最大の転換点の一つである。声は発せられた瞬間に消える。文字が生まれる前、知識は人の記憶だ…庭園は、自然を愛でる場所だと言われる。だが、庭園ほど人の手が行き届いた場所もない。木々は選ばれ、枝は払われ、石は据えられ、水…笑いは、緊張を解きほぐし、人と人の垣根を低くする。初対面の場で交わされる冗談は、警戒を解く合図であり、共に笑った経験は、共に…規則は自由の敵である、と素朴には考えられている。あれをするな、これをせよと命じる規則が増えるほど、私たちの自由は削られていく…子どもは小さな大人ではない。今日では当たり前に聞こえるこの考え方は、歴史的にはかなり新しいものだと言われる。かつての社会では…廃墟に心を引かれる人は少なくない。崩れた工場、蔦に覆われた洋館、草に沈む遊園地。写真集が編まれ、見学の旅が組まれるほどの人気…常識とは、社会の成員が共有している判断の蓄えである。挨拶の仕方から、行列への並び方、他人との距離の取り方まで、私たちは無数の…翻訳とは、単に言葉を別の言語に置き換える作業だと思われがちである。しかし実際の翻訳者の仕事を観察すると、その理解は一面的であ…
登録は1分・クレジットカード不要。無料のまま練習・暗記カード・模試まで使えます。
作成・校閲:ukamiru編集部 · 行政書士 過去問 · gyosei-kiso8-0053
