文章理解
行政書士「文章理解」の問題
都市の生活はしばしば冷たいと言われる。隣人の名前も知らず、すれ違う人々と目を合わせることもない。同じ集合住宅に十年住んでも、挨拶を交わす相手は数えるほどしかいない。農村の緊密な人間関係を知る人からすれば、都市は人間関係が壊れてしまった場所のように見えるだろう。
しかし、この見方は都市の一面しか捉えていない。都市に集まってきた人々の多くは、まさにその「冷たさ」を求めてきたのである。生まれた土地では、自分が誰の子で、どの家の者かをみなが知っている。行動は絶えず見られ、評判は一生ついて回る。そこでは安心と引き換えに、別の生き方を選ぶ自由が制限されていた。都市が与えてくれる〔 ア 〕は、監視の目からの解放であり、過去や出自から切り離されて、新しい自分を試みるための条件であった。職業も装いも交友も、生まれではなく自分の選択で決められることが、都市の暗黙の約束であった。
〔 イ 〕、それは孤立と紙一重でもある。誰にも知られていないことは、誰からも気にかけられていないことと表裏をなす。病気や失業といった困難に直面したとき、都市の自由は急に心細いものに変わる。だからこそ都市では、血縁や地縁によらない新しい結びつき、すなわち趣味の集まりや職業上の仲間、ボランティアの網の目が発達してきた。都市の課題は、田舎の濃密さを取り戻すことではない。選んで加わり、選んで離れられる緩やかなつながりを、どう豊かに育てるかである。匿名の海の中に、いざというとき頼れる島々をどう築くか。都市の成熟は、この設計の巧みさにかかっている。
本文中の空欄〔 ア 〕・〔 イ 〕に入る語句の組合せとして妥当なものはどれか。
1ア:利便性 イ:もっとも
2ア:匿名性 イ:したがって
3ア:匿名性 イ:もっとも
4ア:連帯感 イ:ゆえに
5ア:利便性 イ:ところで
正解
3.ア:匿名性 イ:もっとも
アは「誰にも知られていない」状態を指す匿名性、イは利点を認めつつ影の面へ転じる「もっとも」が入る。
?選択肢ごとの解説
1 ×直前の「監視の目からの解放」に対応するのは利便性ではなく匿名性。
2 ×イの後は前段の利点に留保を付ける流れであり、順接の帰結ではない。
3 ○アは「誰にも知られていない」状態を指す匿名性、イは利点を認めつつ影の面へ転じる「もっとも」が入る。
4 ×連帯感は都市が新たに育てるべきものとして最終段落に登場し、アの位置の内容と逆。
5 ×アが対応せず、イも話題転換ではなく留保の接続が必要。
文章理解の他の問題
報道は世界をありのままに伝える窓である、と考えるのは素朴にすぎる。カメラをどこに向け、どの発言を引用し、どの出来事を一面に載…学校教育への批判として、知識の詰め込みという言葉が使われて久しい。あらかじめ用意された正解を効率よく覚えさせ、試験でそれを再…芸術は何の役に立つのか。この問いは、美術館の予算が削られるたび、音楽の授業が減らされるたびに繰り返されてきた。問われた側はし…環境問題を考えるとき、私たちは一つの奇妙な非対称に直面する。現在の世代が資源を使い尽くし、廃棄物を残せば、その代償を払うのは…時計の上では、一時間は誰にとっても一時間である。しかし、体感される時間の長さは、驚くほど伸び縮みする。楽しい休日は瞬く間に過…自転車の乗り方を言葉で完全に説明できる人はいない。ハンドルの角度、体重の移動、ペダルを踏む力加減。乗れる人はそれらを瞬時に調…機械が人間に代わって判断を下す場面が増えている。融資の審査、採用の選考、犯罪の再犯予測。膨大なデータから規則性を取り出す技術…本を読むことの意味は、情報を得ることだと考えられがちである。確かに、実用書や解説書を開くのは、知らないことを知るためだろう。…
登録は1分・クレジットカード不要。無料のまま練習・暗記カード・模試まで使えます。
作成・校閲:ukamiru編集部 · 行政書士 過去問 · gyosei-kiso8-0023
